「家で食事中にむせることが増えた」

「退院後も失語症や飲み込みのことで困っている」

「訪問STって聞いたことはあるけど、どう頼めばいいの?」

在宅介護をしていると、病院を退院したあとに困ることがあります。

特に嚥下(飲み込み)の不安は、家族だけで抱えるには重いです。

むせる。

食事量が減る。

痰が増える。

このまま家で食べさせて大丈夫なのかなと不安が大きくなることもありますよね。

そんな時に選択肢になるのが、訪問STです。

訪問STとは、言語聴覚士が自宅へ訪問して、飲み込み、ことば、発音、コミュニケーションなどを支援する関わりです。

結論から言うと、家で困っているなら我慢せずに専門家を頼ることをおすすめします。

ただし、訪問STは地域によって見つけにくいことがネックです。

まずSTがいる事業所が少ない。

さらに、嚥下や進行性の病気、緩和ケアに慣れているSTとなると、もっと限られることがあります。

だからこそ、最初の相談先を知っておくことが大事です。

この記事では、訪問STの頼み方、費用の目安、どんな人に必要かを、現役STの視点で整理します。

※本記事は一般的な情報提供です。実際の利用条件、費用、回数、対象になる保険は、主治医、ケアマネジャー、訪問リハビリ事業所、訪問看護ステーションに確認してください。

結論|まずはケアマネに相談。2人に伝えるのもあり

訪問STを使いたい時、まず相談しやすいのはケアマネジャーです。

介護保険を使っている方なら、ケアマネジャーがサービス全体を調整していることが多いからです。

ただ、私は「ケアマネジャーだけに言えば絶対大丈夫」とは思っていません。

理由は、訪問STがいる事業所が少ないからです。

地域によっては、訪問リハビリ事業所に理学療法士や作業療法士はいても、言語聴覚士はいないことが多々あります。

さらに、嚥下の経験があるST、進行性の病気や緩和ケアに慣れているSTとなると、探すのに時間がかかることがあります。

だから私は、家族には「相談先を1人に絞らなくていい」と伝えたいです。

たとえば、こんな伝え方です。

  • ケアマネジャーに「訪問STを探したい」と伝える
  • 主治医にも「家でむせが増えている」と伝える
  • デイサービスのリハ職にも相談する
  • 訪問看護が入っているなら看護師にも伝える
  • 地域包括支援センターに相談する

もちろん、同じ内容を何人にもバラバラに言いすぎると混乱します。

でも、家族が一番相談しやすい人に伝えるだけでなく、もう1人にも伝えておくのはありだと思います。

動いてくれるタイミングが早くなることがあります。

とくに在宅介護は、困りごとが見えにくいです。

家族が大丈夫と言ってしまうと、周囲は本当に大丈夫だと思ってしまいます。

だから、困っている時は遠慮せずに言葉にしていいです。

訪問STが必要そうな人

訪問STが必要そうだと感じるのは、特に嚥下リスクが高い方です。

私が現場で家でもSTが関われたら安心だろうなと感じるのは、進行性の病気の方や、緩和ケアの段階にある方です。

これらは病状が進む中で、飲み込みの状態が少しずつ変わることがあります。

昨日まで食べられていたものが、今日はむせる。

水分でむせる日が増える。

食事に時間がかかる。

痰が増える。

本人が疲れて、食べる量が減る。

このような変化は、家族だけでは判断が難しいです。

もちろん、訪問STがいればすべて解決するわけではありません。

でも、家での食べ方、姿勢、一口量、食形態、口腔ケア、家族の介助方法を一緒に確認できるのは大きいです。

訪問STが必要そうなサインは、次のようなものです。

訪問STが必要そうなサイン。むせ、食事量低下、進行性の病気、緩和ケア、家族の不安を整理した図解

  • 食事中のむせが増えた
  • 食後に咳や痰が増える
  • 水分でむせやすい
  • 食事量が落ちてきた
  • 体重が減ってきた
  • 口の中に食べ物が残る
  • 声がガラガラする
  • 家族が食べさせることに不安を感じている
  • 進行性の病気で飲み込みが変わってきた
  • 緩和ケアで「食べる楽しみ」と安全のバランスに悩んでいる

ここで大事なのは、むせがあるからすぐ訪問ST、という単純な話ではないことです。

発熱、肺炎、急な体調変化、呼吸の苦しさがある時は、まず医師の判断が必要になります。

一方で、「病院に行くほどではないかも」と思いながら、毎日の食事で家族が不安を抱えているなら、相談してよい段階です。

家で困っているなら、我慢しなくていい。

私はここを一番伝えたいです。

訪問STにつながる流れ

訪問STにつながる流れは、住んでいる地域、介護保険の有無、医療保険の対象かどうかで変わります。

ただ、家族が最初に知っておく流れはシンプルです。

まず困りごとを言葉にする。

次にケアマネジャーや主治医へ相談する。

そのあと、STがいる事業所を探し、医師の指示やケアプランに沿って訪問が始まります。

訪問STにつながる流れ。家族の困りごと、ケアマネへ相談、主治医の指示、事業所探し、訪問開始を整理した図解

介護保険の訪問リハビリテーションでは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、心身機能の維持回復や日常生活の自立に向けたリハビリを行うと説明されています。

ただし、訪問リハビリは医師の指示に基づいて行われます。

そのため、家族が「明日からSTさんに来てください」と直接頼んで始まるものではありません。

多くの場合は、次のような流れになります。

  1. 家族が困りごとを整理する
  2. ケアマネジャーに相談する
  3. 主治医へ相談し、必要性を確認する
  4. STがいる事業所を探す
  5. 医師の指示やケアプランに沿って開始する

ここでつまずきやすいのが、4番です。

STがいる事業所が少ない。

いても、訪問件数がいっぱい。

嚥下に詳しいSTが近くにいない。

このようなことが本当にあります。

だから、家族ができることは「STを入れたい」と具体的に言うことです。

「リハビリを入れたい」だけだと、PT・OTの訪問で話が進むこともあります。

もちろんPT・OTの支援も大事です。

でも、飲み込みやことばで困っているなら、言語聴覚士に相談したいと伝える方が話が早いです。

費用の目安|介護保険なら20分で約300円台から

費用は、介護保険なのか、医療保険なのか、事業所の種類、加算、地域、自己負担割合で変わります。

そのため、この記事だけで「あなたの場合はいくら」とは言えません。

ただ、介護保険の訪問リハビリテーションの目安はあります。

厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、訪問リハビリテーションの利用者負担額として、1割負担の場合、20分以上の実施で次の目安が示されています。

  • 要支援1・2:1回298円
  • 要介護1〜5:1回308円

これは1割負担の目安です。

所得によって2割または3割負担になる方もいます。

また、地域区分や加算によって金額は変わります。

たとえば、要介護の方が40分訪問を受ける場合、20分を2回分として計算することがあります。

そこにサービス提供体制強化加算などがつくこともあります。

だから家族には、次のように聞いてほしいです。

「訪問STを入れる場合、1回あたり自己負担はいくらですか?」

「週何回くらい入れますか?」

「20分ですか、40分ですか?」

「加算を含めた月額はいくらくらいですか?」

費用は不安になりますよね。

でも、最初から高額だと思い込んで諦めるより、まず具体的な金額を聞く方が安心です。

1回ごとの費用だけでなく、月に何回使うかで家計への負担は変わります。

ケアマネジャーや事業所に、月額の目安で聞いてみてください。

STがいる事業所が少ない時の探し方

訪問STで一番つまずきやすいのは、費用よりも「人がいない」ことかもしれません。

訪問リハビリの事業所はあっても、STがいるとは限りません。

STがいても、小児中心、成人中心、嚥下経験が少ない、訪問枠が少ないなど、実際にはいろいろあります。

特に、進行性の病気や緩和ケアの嚥下支援では、経験のあるSTに見てもらえると安心です。

でも、地域によってはなかなか見つからないことがあります。

その時は、次のように相談先を広げます。

相談先は1人に絞らない。ケアマネジャー、主治医、訪問看護、地域包括支援センター、デイサービス職員に相談できることを整理した図解

  • ケアマネジャーに複数の事業所を確認してもらう
  • 主治医に訪問リハビリの必要性を相談する
  • 訪問看護ステーションにSTの在籍を確認する
  • デイサービスのリハ職に地域の情報を聞く
  • 地域包括支援センターに相談する
  • 退院した病院の地域連携室に相談する

私は、家族が一番相談しやすい人からでいいと思っています。

でも、一人にだけ伝えて返事を待ち続けるより、関係者のうち2人に伝えておく方が動きが早くなることがあります。

たとえば、ケアマネジャーと主治医。

ケアマネジャーと訪問看護師。

ケアマネジャーとデイサービスのリハ職。

このように、同じ困りごとを共有しておくと、誰かが「この事業所にSTがいたはず」と気づいてくれることがあります。

在宅支援は、情報のつながりが本当に大事です。

家族だけで探そうとしなくて大丈夫です。

相談する時に伝えるとよいこと

訪問STを相談する時は、「STを入れたいです」だけでもよいです。

でも、具体的な困りごとを伝えると、相手が動きやすくなります。

たとえば、次のような内容です。

  • いつから困っているか
  • 何でむせるか
  • 水分、食事、薬のどれが困るか
  • 発熱や肺炎があったか
  • 体重が減っているか
  • 食事にかかる時間
  • 家族が介助で怖いと感じている場面
  • 本人が何を食べたいか
  • 病名や進行性の病気の有無
  • 緩和ケアで大事にしたいこと

特に嚥下では、家で食べているものがとても大事です。

病院では食べられていた。

でも家では食べにくい。

このズレはよくあります。

家では、好きな食べ物、家族の手料理、市販品、外食、宅配食など、病院とは違うものを食べます。

だから、訪問STに来てもらえるなら、実際の食事場面を見てもらえることが大きなメリットです。

もし食事作りそのものが負担になっている場合は、訪問STだけでなく、やわらか食や宅配食を併用する選択肢もあります。

家族だけで毎日の食事を整えるのがしんどい時は、冷凍のやわらか食を試すのも一つの方法です。
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ただし、宅配食を使えば安全という意味ではありません。

本人に合う食形態か、むせが増えないか、食べる姿勢はどうかを見ながら、必要ならSTや医師に相談してください。

訪問STでできること・できないこと

訪問STは、家で困っていることを一緒に整理してくれる心強い存在です。

でも、何でもできるわけではありません。

できることと、できないことを分けて考えると安心です。

訪問STでできることの例です。

  • 食事場面の観察
  • 姿勢や一口量の助言
  • 食形態やとろみの相談
  • 口腔ケアの確認
  • 嚥下体操や発声練習
  • 失語症のコミュニケーション支援
  • 家族への介助方法の助言
  • 必要時に医師や他職種へ情報共有

一方で、訪問STだけで判断できないこともあります。

  • 肺炎や発熱の診断
  • 食べてよいかどうかの最終判断
  • 医師の指示なしの医療的判断
  • すべての誤嚥を防ぐこと
  • 進行性の病気を止めること

ここを誤解しないことが大事です。

訪問STは魔法の解決策ではありません。

でも、家族が不安なまま食事介助を続けるより、ずっと心強い選択肢です。

家での実際の食事を見ながら、「今できる工夫」を一緒に考えられる。

それが訪問STの大きな価値だと思います。

まとめ|家で困っているなら我慢しなくていい

訪問STは、家で嚥下やことばの困りごとがある時の大事な選択肢です。

特に、進行性の病気、緩和ケア、嚥下リスクが高い方では、早めに相談できると安心です。

ただし、STがいる事業所は地域によって少ないことがあります。

だから、家族だけで探そうとしなくて大丈夫です。

まずはケアマネジャーに相談する。

主治医にも伝える。

デイサービスや訪問看護など、相談しやすい人にも伝えておく。

一人にだけ任せず、2人に伝えておくのも現実的です。

今日のポイントをまとめます。

  • 訪問STは、飲み込みやことばの困りごとを自宅で支援する選択肢
  • まずはケアマネジャーに相談しやすい
  • 主治医の指示やケアプランが関わる
  • STがいる事業所は少ないことがある
  • 費用は1割負担なら20分約300円台が目安
  • 実際の金額は地域、加算、負担割合で変わる
  • 家で困っているなら我慢しなくていい

在宅介護は、家族が頑張りすぎてしまいやすいです。

でも、食事や飲み込みの不安は、家族だけで背負うには重いです。

「こんなことで相談していいのかな」と思わずに、まずは言葉にしてみてください。

動き出すきっかけは、家族の一言から始まることがあります。

参考資料

本記事は一般的な情報提供であり、個別の医療・介護判断に代わるものではありません。嚥下状態、食形態、訪問リハビリの利用条件は、主治医、ケアマネジャー、訪問リハビリ事業所、訪問看護ステーションにご確認ください。