「あ、あ、あのね」と、わが子のことばが詰まる。その瞬間、胸がざわっとしますよね。
先にお伝えします。幼児期の吃音(きつおん)の多くは、自然な経過で軽くなると報告されています。そして、 親の育て方のせいではありません 。
現役ST・2児の母のうめあかりが、受診の目安と家庭での関わり方をお伝えします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断・医療相談に代わるものではありません。気になる症状があれば、小児科や言語聴覚士(ST)などの専門機関にご相談くださいね。
結論|まず知ってほしい3つのこと
いちばん大事なことを、最初にまとめます。
- 吃音は親のせいではありません 。体質的な要因が大きいと分かっています
- 幼児期の吃音の多くは、自然な経過で軽くなると報告されている
- 経過には波があります。良くなったり、また出たりを繰り返す
3つ目の「波」は、意外と知られていません。でも、事前に知っているかどうかで心の負担が大きく変わります。

吃音の経過は、この図のようなイメージです。 「良くなる・また出るを繰り返す」けれど、「全体としては少しずつ軽くなる」 子が多いとされています。
調子の良い時期と悪い時期が、数週間から数ヶ月単位で入れ替わります(日本吃音・流暢性障害学会)。「治ったと思ったのに、また出た」は悪化ではありません。
ここを知っておくと、ぶり返した時に「私の関わり方が悪かった?」と落ち込みが軽減するんじゃないかと思います。
子どもの吃音とは|10人に1人ほどが経験します
吃音は、話したいことばがスムーズに出てこない状態のことです。一般的には「どもり」とも呼ばれます。
吃音にはいくつかタイプがあります。
- 繰り返す :「だ、だ、だいこん」のように最初の音を繰り返す(連発)
- 引き伸ばす :「だーーいこん」のように音が伸びる(伸発)
- 詰まる :「っ、っ、だいこん」と最初の音が出てこない(難発)
発症率は約8〜11%程度と報告されています(日本吃音・流暢性障害学会)。日本の研究では、3歳までの発症率が8.9%というデータもあります。
つまり、 10人に1人ほどが幼児期に経験する 、めずらしくないことばの特徴です。発症のピークは2〜4歳ごろとされています。
原因は「体質」。育て方ではありません
かつては「親の接し方が悪い」という説がありました。これはかなり古い考え方です。
2000年ごろ以降の双子研究・脳研究・遺伝子研究で、流れが変わりました。 環境よりも、生まれ持った体質的な要因が原因の多くを占める と分かってきたんです(日本吃音・流暢性障害学会)。
国立障害者リハビリテーションセンター研究所でも、幼児吃音の出現率や経過を調べる大規模な調査が進められています。研究の世界でも「親のせい」という前提は、もうありません。
受診・相談の目安|様子見でいいサインと相談サイン
「じゃあ、病院に行くべきなの?」が次の疑問だと思います。判断の目安を図にまとめました。

様子見でいいサイン
次の状態なら、あわてて受診しなくても大丈夫なことが多いです。
- 吃りはじめて1年以内
- 本人は気にしていない
- 楽しくおしゃべりできている
海外の研究では、発症から2年で約31%、3年で約63%、4年で約74%が自然に回復したと報告されています(Yairiらの研究・日本吃音・流暢性障害学会の解説より)。
数字が示すとおり、 時間とともに軽くなる子が多い のです。だから「様子を見ていい時期」が確かにあります。
相談したほうがいいサイン
一方で、次のどれかに当てはまるなら相談を考えていい段階です。
- 出はじめて1年以上ずっと続いている
- 力んで話す・顔や体に力が入る
- 本人が話しにくさを気にし始めた
- 話すのを避ける・返事をしぶる
- 言葉に詰まる時間が長くなった
- からかいや指摘で本人がつらそう
- 吃音が悪化の一方で改善が見えない
とくに「本人が気にし始めた」「話すのを避ける」は大事なサインです。話す自信が下がる前に、専門家と一緒に環境を整えるのがおすすめです。
どこに相談すればいい?
相談先は、身近なところで大丈夫です。
- かかりつけの小児科 :最初の窓口に。必要なら紹介状をもらえます
- ことばの教室 :地域の小学校などに併設された、通級の指導教室
- ST(言語聴覚士)のいる病院・療育センター :専門的な評価と支援
💡 ことばの教室って? :ことばの発達や吃音が気になる子が、週1回など通いながら支援を受けられる教室のこと。地域の教育委員会や園・学校を通じて相談できます。
「相談=大ごと」ではありません。モヤモヤしたまま検索を続けるより、一度話を聞いてもらう方がずっと楽になりますよ。
家庭での関わり方|「ゆっくり言って」は言わなくていい
家庭でできるのは、練習ではなく「話しやすい空気づくり」です。声かけの目安を図にまとめました。

やってはいけない声かけ
良かれと思って言いがちな、次のことばは避けたいところです。
- 「ゆっくり言ってごらん」
- 「もう一回言い直して」
- 「落ち着いて話して」
理由はシンプルです。 「自分の話し方はおかしいのかな」と本人に意識させてしまう から。幼児期は、本人が吃音を意識すること自体が負担になりやすいと考えられています。
学会の解説でも「心配そうな表情をせず、子どもが楽しくおしゃべりを続けられるように」という関わりがおすすめです(日本吃音・流暢性障害学会)。
おすすめの聞き方
代わりに、聞き方をほんの少し変えてみてください。
- 顔を見て、ゆったりうなずいて聞く
- 話し終わるまで先回りせずに待つ
- 話の中身に「そうなんだね」と返す
ポイントは、話し方ではなく 話の中身に反応する ことです。「だ、だ、だいこん食べた」と言われたら、「だいこん食べたんだね、おいしかった?」と返す。それだけで十分です。

話す練習より、楽しいやりとりを増やす
もうひとつおすすめなのが、歌・絵本・ことば遊びです。歌や音読の時は吃音が出にくいことが多く、「スムーズに話せた」という経験を積みやすいのです。
親子で楽しめる絵本選びは、現役STママが選ぶ言葉を伸ばす絵本3選でくわしく紹介しています。繰り返しのリズムがある絵本は、読み聞かせの定番としてもおすすめです(PR)。
吃音だけを特別扱いせず、ことばの発達を全体的に育てる遊びや教材を取り入れるのも良い方法です。おうちで楽しく取り組める通信教材もあります(PR)。
現役STママの体験談|STなのに、私も動揺しました
ここからは、私自身の話をさせてください。
わが子がどもった時、頭が真っ白になった
わが家の長男にも、吃音が出た時期があります。夕食の何気ないひとことが詰まった瞬間、頭では「よくあること」と分かっているのに、胸がざわつきました。
その夜、子どもが寝たあとに検索魔になりました。「吃音 治る」「吃音 親のせい」。 STとして知識はあるのに、親としてはやっぱり動揺した んです。
専門家でもこうなのだから、初めて向き合うお母さんが不安になるのは当たり前です。あなたの心配は、過剰でも何でもありません。
わが家の経過は、3歳の息子が吃音に。9年現場×親の本音でくわしく書いています。
現場で出会った、自分を責めるお母さん
現場でも、吃音のお子さんのお母さんと関わったことがあります。
そのお母さんは、とても戸惑っていました。話を聞くうちに、「私の関わり方が悪かったんでしょうか」と、ご自身を責めている様子が伝わってきました。
私が一番伝えたかったのは、これです。 吃音は、親のせいではありません 。体質的な要因が大きいと、研究で示されています。
そしてもうひとつ。「経過には波があって、治ったと思ってもまた出ることがあります」と先にお伝えしました。ぶり返した時に「悪化した、どうしよう」と落ち込まないためです。
先に知っておくだけで、波が来ても「これがあの波か」と受け止められます。
お母さん自身がつらくなった時は
検索がやめられない、眠れない、涙が出る。そんな状態が続くなら、お母さん自身のケアも大切です。
家事や育児の合間に、自宅から相談できるオンライン診療という選択肢もあります(PR)。
子どもを支える前に、まず自分の心を守る。これは後回しにしないでくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q1. 保育園・幼稚園に伝えるべき?
伝えておくのがおすすめです。「言い直しをさせないでほしい」「話し終わるまで待ってほしい」の2点をお願いするだけで、園での過ごしやすさが変わります。
口頭で伝えにくければ、メモ1枚を渡すくらいのライトさで大丈夫です。
Q2. 吃音は治りますか?
「治る」と断言はできません。ただ、発症から4年で約74%が自然に回復したという報告があります(日本吃音・流暢性障害学会の解説より)。
多くの子は軽くなっていくこと、波を繰り返しながら進むこと。この2つを前提に、気になる時は専門家に相談してみてくださいね。
Q3. きょうだいや友だちに「うつる」ことはありますか?
うつりません。吃音は体質的な要因が大きいもので、まねや感染で起きるものではないとされています。
きょうだいが同時期にどもって見えるのは、ことばが急に伸びる時期の一時的な非流暢さのことも多いです。
Q4. 「ゆっくり言って」と言ってしまいました。手遅れですか?
大丈夫です。1回2回の声かけで決まるものではありません。
気づいた今日から、聞き方を変えればOKです。完璧なお母さんではなく「気づいたら戻れるお母さん」で十分です。
まとめ|「私のせい?」と思ったあなたへ
最後に、この記事の要点です。
- 吃音は 体質的な要因が大きく、親のせいではない
- 10人に1人ほどが経験し、多くは自然な経過で軽くなると報告されている
- 経過には波がある。ぶり返しは失敗ではない
- 1年以上続く・力んで話す・本人が気にし始めた・話すのを避ける なら相談を
- 相談先は、かかりつけの小児科・ことばの教室・STのいる病院
- 家庭では「ゆっくり言って」ではなく、ゆったり聞いて待つ
わが子のことばが詰まるたび、胸がぎゅっとなるあの感覚。私も通ってきたので、よく分かります。
でも、吃音は誰のせいでもありません。今日から聞き方を少し変えて、気になるサインがあれば専門家を頼ってください。それで十分、お子さんの安心は育っていきます。
【参考にした情報】
※本記事は現役STとしての臨床経験と公開情報、自身の子育て経験をもとにした内容です。個別の診断・医療相談に代わるものではありません。気になる症状があれば、必ず小児科・言語聴覚士外来などの専門機関にご相談ください。
ご質問やご相談があれば、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

