「B型に通っているけど、A型にも挑戦できるのかな」
「A型に移りたい時、誰に相談すればいいの?」
「2027年4月以降は、手続きが変わるって本当?」
就労継続支援B型からA型へ進みたい時、これから大事になるのが就労選択支援です。
私自身も、いま担当している方のことで悩んでいます。
B型の作業は簡単すぎる。
工賃も安い。だからA型へ移りたい。
でも、ハローワークを通じた障害者雇用は週5日勤務の求人が多く、いきなりそこまではきつい。
このB型では物足りない。でも一般企業や障害者雇用はまだ不安という段階にいる方は、きっと少なくないと思います。
結論から言うと、2027年4月以降に新しくA型を使い始める場合は、就労選択支援を通して、本人に合う働き方を整理する流れが中心になります。
この記事では、B型からA型へステップアップしたい人に向けて、手続きの流れ、アセスメントで見られやすいこと、今から準備できるメモを整理していきますね。
※本記事は、厚生労働省などの公開資料をもとにした一般的な情報です。実際の手続きは自治体ごとに異なるため、市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員、利用中・利用予定の事業所に確認してください。
結論|A型に行く前に「働き方の整理」が入る
2027年4月以降、B型からA型へ移りたい人は、いきなりA型事業所を探して終わりではありません。
多くの場合、まず本人の希望や働く力、必要な配慮を整理する流れになります。
その中心になるのが、就労選択支援です。
💡 就労選択支援って何?
ざっくり言うと、「どの働き方が合いそうか」を本人と一緒に整理する障害福祉サービスです。A型に行けるかを一方的に決める試験ではありません。
厚生労働省の資料では、就労選択支援は、本人が就労先や働き方をよりよく選べるように、希望、就労能力、適性などを整理する支援とされています。
つまり、見るのはできないところだけではありません。
- どんな仕事をしたいか
- どんな作業が得意か
- 何時間なら安定して働けそうか
- どんな配慮があれば続けやすいか
- A型以外の選択肢も含めて合っているか
ここを整理してから、A型にいくか、B型の継続、就労移行支援、障害者雇用などを考えていくイメージです。
A型は雇用契約を結ぶ働き方です。
最低賃金が関わる分、B型よりも勤務時間、作業の安定性、欠席連絡、職場でのやり取りなどが求められやすくなります。
だからこそ、A型に移る前に本人が無理なく続けられる形を整理しておくことが大事です。
B型とA型は何が違うのか
B型からA型へ進みたい時は、まず2つの違いを押さえると分かりやすいです。
一番大きな違いは、雇用契約があるかどうかです。
B型は、雇用契約を結ばずに、自分の体調やペースに合わせて通いやすいサービスです。
支払われるお金は「工賃」と呼ばれます。
A型は、原則として雇用契約を結ぶ働き方。
そのため、最低賃金、勤務時間、勤怠、仕事としての責任が関わってきます。
💡 雇用契約って何?
ざっくり言うと、働く人と雇う側が約束をして働く形です。具体的なことをいうと給料、勤務時間、休み方などのルールがはっきりしています。
B型が悪くて、A型が良いという話ではありません。
B型は、体調に波がある人、短時間から始めたい人、まず生活リズムを整えたい人におすすめ。
A型は、決まった時間に通えて、雇用契約の中で働く練習をしたい人に合う働き方です。
ただ、勤務時間や週何回通うかは、事業所や求人内容によって違います。
週5日だけとは限らないし、短時間から相談できるA型事業所もあります。
大切なことは、雇用契約を結ぶ以上、決められた勤務日、勤務時間、欠席連絡などはB型より求められやすくなります。
賃金は、A型では原則として最低賃金が関わり、
B型は雇用契約ではないため、工賃という形です。
どれくらい稼げるかは地域、勤務時間、事業所の仕事量で変わるので、見学や求人をみて確認しておきましょう。
ただ、B型で通所が安定してきた人が、A型へ進みたいと思うのは自然な流れだと思います。
その時に、2027年4月以降は新しい就労選択支援を知っておくと安心です。

B型からA型へ進む流れ
最初に相談する相手は、今通っているB型事業所の職員やサービス管理責任者がよく分かると思います。
これは普段の通所状況や作業の様子を知っているから。
次に、相談支援専門員に「A型で働くことも考えています」と伝えてみましょう。
相談支援専門員は、障害福祉サービスの利用計画を一緒に考えてくれる人です。
💡 相談支援専門員って何?
障害福祉サービスを使う時に、本人の希望や生活状況を聞き、サービス等利用計画を作る専門職です。(ケアマネとは異なります)
流れをざっくり書くと、次のようになります。
- B型事業所に「A型を考えている」と相談する
- 相談支援専門員へ相談する
- 市区町村の障害福祉窓口で手続きを確認する
- 就労選択支援で働き方を整理する
- A型事業所を見学・体験・応募する
- サービス等利用計画案を作る
- 市区町村の支給決定を受ける
- A型の利用を開始する
ここで注意したいのが、A型は求人に応募しただけでは完結しないことです。
A型事業所の求人がハローワークに出ていることもあります。
でも、A型は障害福祉サービスでもあります。
そのため、働く事業所が決まるだけでなく、市区町村の支給決定が必要になります。
求人に受かったらすぐ利用できると思っていると、手続きで戸惑うかもしれません。
相談支援専門員、市区町村、A型事業所の3つをつなげながら進めると安心です。
就労選択支援で見られること
就労選択支援では、本人の希望と、実際に続けやすい働き方を一緒に整理します。
ここで大事なのは、アセスメントを「落とすための試験」と思わないことです。
💡 アセスメントって何?
今の状態、得意なこと、苦手なこと、必要な支援を整理することです。点数だけで合否を決めるものではありません。
たとえば、こんなことを見ます。
- 本人はなぜA型に行きたいのか
- 週に何日なら通えそうか
- 1日何時間なら作業できそうか
- どんな作業が得意か
- どんな場面で疲れやすいか
- 指示を聞いて作業できるか
- 報告や相談ができるか
- 通勤できるか
- どんな配慮が必要か
失語症や高次脳機能障害がある方なら、言葉だけで説明するのが難しいこともあります。
その場合は、家族やB型事業所の職員が、本人の同意のもとで情報を補うことも大切です。
たとえば、「疲れると聞き返しが増える」「一度に複数の指示が入ると混乱しやすい」「文字で見せると分かりやすい」などです。
本人がA型に行きたい気持ちがあっても、配慮が整理されていないと、働き始めてからつらくなることがあります。
逆に、必要な配慮が分かっていれば、A型で働く見通しが立てやすくなります。

適性検査はある?STは何を準備すればいい?
一番気になるのは、ここだと思います。
「A型へ移る時に、適性検査みたいなものがあるの?」
「もし検査があるなら、STとして何を訓練すればいいの?」
私もここを知りたくて調べました。
結論から言うと、学校のテストのような「合格・不合格を決める適性検査」と考えるより、作業場面を見ながら働き方を整理するアセスメントと考える方が近いです。
厚生労働省の就労選択支援実施マニュアルでも、作業場面などを活用して、本人の希望、強み、課題、必要な支援を整理する流れが示されています。
つまり、見られやすいのは次のような力です。
- 決まった時間に来られるか
- 作業を続けられる体力があるか
- 手順を理解できるか
- 分からない時に相談できるか
- ミスに気づけるか
- 疲れた時に休憩を申し出られるか
- 周囲と最低限のやり取りができるか
高次脳機能障害の方なら、注意、記憶、段取り、疲労に関する部分が大事になります。
失語症の方なら、言葉で説明できるかだけでなく、文字、メモ、指さし、選択肢などを使って伝えられるかも大事です。
STとして関わるなら、A型の検査に受かる練習をするより、働く場面で困りにくくする練習をする方が現実的だと思います。
たとえば、次のような訓練です。
- 作業手順を見て、順番通りに進める
- 終わったら報告する
- 分からない時に「もう一度お願いします」と伝える
- 疲れた時に休憩を伝える
- メモを見ながら作業する
- タイマーを使って作業時間を区切る
- ミスを見直す
- 2つ以上の指示を整理する
ここは、STだけで抱えるより、作業療法士、支援員、相談支援専門員、A型事業所とも情報共有できるとよいです。
この人は何ができないかではなく、「どんな支援があれば続けられるか」を言語化しておく。
そこが、STとしてできる大事な準備だと思います。
今から準備しておくとよいメモ
B型からA型へ移りたいなら、日々の記録がかなり役に立ちます。
これは、「A型に行きたいです」と気持ちだけ伝えるより、今の通所状況や作業の様子が分かる方が相談しやすいから。
難しい書類を作る必要はありません。まずはスマホのメモでも、ノートでも大丈夫です。
準備しておきたいのは、次の8つです。
- 週に何日通えているか
- 何時間くらい作業できているか
- 欠席や早退の理由
- 得意な作業
- 苦手な作業や疲れやすい場面
- 必要な配慮
- 希望する勤務日数と勤務時間
- 希望する賃金や生活費の目安
たとえば、こんなメモです。
- 月・水・金は通えている
- 午前中2時間なら集中しやすい
- 人が多い場所だと疲れやすい
- 口頭説明だけだと忘れやすい
- 作業手順を紙で見せてもらうと分かりやすい
- 休憩の声かけがあると続けやすい
- A型なら週3日、1日4時間くらいから始めたい
高次脳機能障害の方は、本人の中では「大丈夫」と思っていても、実際には疲れや注意の問題が出ることがあります。
失語症の方は、言いたいことがあっても、面談の場でうまく言葉にできないことも多いですよね。
だから、事前にメモを作っておくことは、本人を守る準備にもなります。
家族や支援者が代わりに全部決めるのではなく、本人の言葉を引き出すためのメモとして使うのがよいと思います。

A型に移ることだけが正解ではない
A型へ進むことは、ひとつのステップアップです。
でも、A型に移ることだけが正解ではありません。
B型で安定しているなら、B型を続けながら少しずつ作業時間を増やす方法もあります。
それにA型ではなく、就労移行支援で一般就労に向けた練習をする方が合う人や障害者雇用を目指す人もいます。
反対に、A型に挑戦してみたけれど、体調が崩れてB型に戻る人もいると思います。
それは失敗ではありません。
その時の体調、生活、障害特性に合わせて働き方を選び直しているだけです。
特に、脳卒中後の失語症や高次脳機能障害は、外から見えにくい困りごとがあります。
疲れやすさ、注意の続きにくさ、言葉の出にくさ、予定変更への弱さは、本人の努力不足ではありません。
周りから見えにくいからこそ、支援者に言語化してもらうことが大事です。
A型に行けるかどうかだけで考えるより、A型で続けるために何が必要かを整理する方が、必要性が高いかもしれません。
相談先は1か所に絞らなくていい
B型からA型へ進みたい時、相談先は1つだけではありません。
最初は、話しやすい人で大丈夫。
ただ、手続きにはいくつかの関係者が出てきます。ここが大変ですよね。
- B型事業所の職員
- サービス管理責任者
- 相談支援専門員
- 市区町村の障害福祉窓口
- 就労選択支援事業所
- A型事業所
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
全部に一気に連絡する必要はありません。
まずは、今通っているB型事業所か、相談支援専門員に伝えるのが現実的です。
その時は、このように伝えてみましょう。
A型にも興味があります。
2027年4月以降の手続きも含めて、どんな準備が必要か知りたいです。
これだけで、話は進みやすくなります。
本人が言いにくい場合は、家族が同席してもよいと思います。
ただし、本人の希望を置き去りにしないことは大事です。
家族がA型に行かせたいではなく、「本人はどう働きたいのか」を中心に考える方が安心です。
まとめ|A型を目指すなら、まず記録と相談から
2027年4月以降に、B型からA型へステップアップしたい場合、就労選択支援を含めた流れを知っておくことが大切です。
就労選択支援は、A型に行けるかを一方的に決める試験ではありません。
本人の希望、働く力、得意不得意、必要な配慮を整理するための支援です。
今からできる準備は、難しくありません。
- 通所できた日数をメモする
- 作業できた時間を記録する
- 希望する週回数と勤務時間を書く
- 得意な作業を書く
- 苦手な場面を書く
- 疲れやすい条件を書く
- 必要な配慮を言葉にする
B型からA型へ進むことは、焦って決めることではありません。
でも、「いつかA型に行きたい」と思っているなら、今のB型での毎日が大事な材料になります。
2027年4月以降は、A型へ進む前の流れも変わっていきます。
だからこそ、焦らず準備していく。
まずは、相談支援専門員やB型事業所に話してみてください。
その一言が、次の働き方を考える入口になります。
脳卒中後の働き方全体については、こちらの記事でも整理しています。
失語症や高次脳機能障害の方に合う会話道具については、こちらも参考になります。
参考にした情報
- 厚生労働省|就労選択支援について
- 厚生労働省|障害者の就労支援対策の状況
- 厚生労働省|就労選択支援の実施について
- 厚生労働省|就労選択支援実施マニュアル
- 厚生労働省|就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について
- WAM NET|就労継続支援A型(雇用型)
※本記事は一般的な情報提供です。制度の詳細や手続きは、自治体や事業所によって異なる場合があります。実際に利用を検討する時は、市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員、主治医、利用中・利用予定の事業所へ確認してください。



