「家でも練習したい」「宿題が欲しい」

言語聴覚士(ST)として働いていると、ご本人やご家族からそう相談されることがあります。

でも、用意した問題が難しすぎたり、ご家族が先に答えを教えてしまったり。練習したい気持ちはあっても、家でどう進めればよいか迷うこともありますよね。

私が自宅練習で取り組みやすいと感じるのは、絵を見て名前を書く「書称(しょしょう)」です。書いたものが残るので、答え合わせをしやすいところがよいと思っています。

ただ、全員に書く練習が合うわけではありません。本人に合う課題を選び、無理なく続けられる形にすることが先です。

まずは「家で一緒にできる問題」を選ぶ

失語症では、話すことだけでなく、聞いて理解すること、読むこと、書くことにも難しさが出ます。どこが得意で、どこに助けが必要かは一人ずつ違います。ASHAの失語症の説明でも、この違いが示されています。

そのため、「言葉が出ないから、文字を書けばよい」とは決められません。

プリントを選ぶときは、担当のSTに実物を見せて、次のことを聞いておくと家で迷いにくくなります。

  • この問題は、今の本人に合っていますか?
  • 答えが出ないとき、どんな助け方をするとよいですか?
  • 何問くらいから始めるとよいですか?

病院でSTとできた問題でも、家で一人で取り組むと難しいことがあります。 家でも同じようにできるとは限らないので、最初は少量を一緒に試してみましょう。

ほとんど手が止まってしまうなら、頑張りが足りないのではなく、課題が合っていない可能性があります。

書称プリントは、どう使う?

書称は、例えば「傘」の絵を見て、その名前を書く練習です。ここからの手順は、ご家族が進め方をイメージするための例です。実際の手がかりや量は、担当のSTと相談して調整します。

最初は、なじみのある物から

身近な物の絵を選び、何の絵なのか本人にも分かるか確かめます。絵そのものが分かりにくいと、名前を思い出す練習になる前につまずいてしまいます。

最初から一枚全部を埋めなくても大丈夫です。例えば数問だけ試し、疲れ方や取り組みやすさを見ます。この問題数は治療として決まった量ではなく、始め方の一例です。

漢字にするか、ひらがなにするかも本人に合わせるようにしましょう。名前を書くことが目的なら、本人が使いやすい文字から考えてみてください。

手の麻痺などで鉛筆を動かしにくい場合は、書けない理由を失語症だけで判断しないことも必要です。文字の選択肢を指さすなど、別の答え方をSTに相談できます。

答えが出ないときは、見本を使ってもいい

しばらく取り組んでも難しいときは、本人に答えを見てみるか確かめる方法があります。

見本を見ながら写す、文字の候補から選ぶなど、少し取り組みやすい形に変えます。ただし、見本なしで名前を書く練習と、見本を写す練習は別です。どちらができたのかを分けておくと、次の相談に役立ちます。

私は書称の「答え合わせをしやすい」ところがよいと感じますが、ご本人が自分だけで正誤を確かめられるとは限りません。採点だけで終わらず、どんな助けがあると書けたのかも見ておきたいです。

ブログにも失語症の訓練プリント一覧を用意しています。まずは担当のSTと一緒に、使えそうなものを選んでみてください。

書称プリントは身近な絵から少量試し、難しいときは見本を使う。課題や量は担当のSTと相談する

ご家族は、答えを教える前に少し待ってみる

私が自宅練習で気になるのは、ご家族が先に答えを教えてしまうことです。

助けること自体が悪いわけではありません。ただ、本人がまだ考えている途中なら、まずその時間を残したいです。

例えば、手が止まったときにすぐ「傘でしょ」と言う代わりに、「もう少し考える? ヒントを見る?」と短く尋ねる方法があります。これは声かけの例で、返事はうなずきや指さしでも構いません。

一方で、困っているのに長く待たせ続ける必要もありません。本人が助けを求めているときや、疲れてきたときは、見本を出したり、その問題を終えたりしてよいと思います。

失語症の会話支援では、文字や絵、身振りなどを使い、本人が伝えられるように支えることが大切にされています。Aphasia Instituteの会話支援

普段の会話まで、答えを当てる練習にしなくて大丈夫です。 言葉が出なくても、伝えたいことが分かったなら「それが言いたかったんだね」と受け止めたいですね。

答えを教える前に考える時間を残し、助けが必要か聞く。疲れたら休み、普段の会話をテストにしない

新聞や雑誌を読む時間もあっていい

私が伝えたいのは、続けることの大切さです。そのためにも、プリントだけにこだわらず、好きな新聞や雑誌を読むこともおすすめしています。

もちろん、長い記事を読んだり、内容を理解したりすることが難しい方もいます。そんなときに「最後まで読まないと」と考えなくてよいと思います。

例えば、こんな楽しみ方があります。

  • 好きな記事の見出しを一つ見る
  • 写真を眺めて、気になるものを指さす
  • 分かる言葉を一緒に探す

声に出せたことと、意味が分かったことは同じではありません。無理に音読や内容のテストにせず、本人が楽しめているかも見てみてください。

これは、新聞を読めば失語症が治るという話ではありません。好きなものに触れる時間を、生活の中に残してほしいという私の考えです。

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参考資料

資料確認:2026年9月17日。主に脳卒中などによる成人の失語症を想定しています。本文の課題例は家庭での説明用で、個別の評価・治療計画に代わるものではありません。掲載内容へのお問い合わせはこちらへお願いします。